2001年の春に奈良県野迫川村でイワナを釣りました。 紀伊半島のイワナがキリクチと呼ばれていて、世界南限の生息域であることを知ったのは2002年に なってからです。 和歌山県日高川源流の小森谷渓谷も、キリクチの里として知られていますが、1960年頃に絶滅 その後、放流されたキリクチとヤマトイワナの人為交雑種が生息しているようです。 以下に、木村県知事からもらったメールを紹介します。 先日は、メールをいただき、ありがとうございました。 早速ですが、お寄せいただきました「キリクチ」の保護に関するご意見にお答 えします。 本県での唯一の生息地であった日高川水系小森谷における自然個体群としての キリクチは、1960年ごろに絶滅したものとみなされています。 現在では、かつて放流されたキリクチとキソイワナの人為交雑種が生息し、イ ワナ類の生息の最南端とされているということです。 和歌山県の保全上重要な動植物を調査した「和歌山県レッドデータブック」に は、856種もの貴重な動植物が掲載されておりますが、今後、これら動植物や自 然環境の保護について、検討していく必要があると考えています。 今後も貴重なご意見をよろしくお願いします。 和歌山県知事 木 村 良 樹 木曽イワナというのは、木曽川水系に生息するヤマトイワナの昔ながらの呼び方で、キリクチとは 系統的に同じ種類と言って良いと思います。 環境省の報告より抜粋 ○ヤマトイワナ Salvelinus leucomaenis japonicus 滋賀、山梨、長野、岐阜、兵庫、奈良、鳥取、島根県から報告されたが、このメッシュ図は分布の 実情を示すとはいい難い。大島(1961)、稲村・中村(1962)、上原(1980)によれば、この魚は 主に中部地方の太平洋側と琵琶湖の水系に分布する。河川によってはイワナと共にすむという (今西,l967)。また、日本海側の千曲川(長野県)源流からも、ヤマトイワナが記録されている (上原,1980)。両者の形態は酷似し分類学的関係は微妙である。 ○キリクチ Salvelinus leucomaenis japonicus かつては筆者はキリクチを奈良県の熊野川水系川迫川源流の神童子川と小坪谷で採集し、形態が ヤマトイワナに一致することを確かめた。紀伊半島のヤマトイワナは一般にキリクチと呼ばれ、 絶滅危惧種になっている(環境庁,1991)。同水系の弥山川と河原樋川源流の弓手原川にも、 キリクチがすむという(木村英造氏談話)。なお、和歌山県日高川源流トチンド谷のキリクチは、 昭和30年頃にいなくなったので、昭和56年から他川産を放流しているという(木村英造氏談話)。 このような紀伊半島のヤマトイワナは、日本最南端のイワナ属として、学術的にも貴重である。 ですから、2003年現在、イワナ類の世界生息南限にあたる小森渓谷(トチンド谷)には、 放流されたヤマトイワナ(キリクチ)の末裔が残っていることになります。 和歌山県では、紀伊山地の霊場と参詣道を世界遺産に登録申請しています。 残念ながら、この中には龍神村は入っていませんが、何とかして稀少種キリクチの保護を続けたい ものです。 2000年弱(実はもっと長いでしょうが)まで保たれたキリクチの里を未来に残せるように・・・